ねむの木学園に想う

ねむの木学園の建築群

 各種報道でご存じの方も多いかと思いますが、3月21日、ねむの木学園の創設者であり、学園長である宮城まり子さんがご逝去されました。心よりご冥福をお祈りいたします。
 ご生前には弊社代表と共に、こども美術館を見学した際にお目にかかり、気さくにお話させていただいたことが思い浮かびます。

 掛川市の市街地を北に向かい、カラフルな陶器質タイルがモザイク状に張られた擁壁のある交差点を、山中に向かう方向に入り、しばらく進むと山里に佇むように、オレンジ色のスパニッシュ瓦屋根と白壁の、ねむの木学園の園舎群が樹林越しに見えてきます。その園舎群を右手に見ながら500mほど進むと、吉行淳之介文学館が、さらに山中のうねった細道を1㎞ほど進むと、子ども美術館(どんぐり)が、さらに1㎞ほど山中に入ると、樹林に囲まれた子ども美術館(緑の中)が現れます。

 宮城まり子さんは建築にも感性豊かなポリシーを持たれており、設計・施工の際にはいろいろ要望を出されたそうです。この美術館や文学館は著名建築家の方々の設計により特徴ある外観や内部空間を持つ建築が完成し、内部の展示物は学園の子たちの描かれた絵画等の、心が洗われる作品ばかりです。森林浴も兼ね訪れるのもいいかもしれません。


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【子ども美術館(どんぐり)1】
藤森照信氏 設計 2007年竣工 
アプローチから入り、受付を済ませて、そのまま外部に通り抜け、スロープを登り2階の展示室から入場する設計。また受付横のエレベーターから2階展示室に向かうルートもあります。



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【子ども美術館(どんぐり)2】
宮城さんの「自然に溶け込んだ美術館を」との要望で設計されたこの美術館のどんぐり型の屋根材は、学園の子どもたちによる手もみの銅板葺き。外壁は土入り漆喰塗、棟は芝草植え、内壁は漆喰塗、自然素材で構成されています。腰下の草花の絵は学園の子どもたちにより描かれました。



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【子ども美術館(緑の中)1】
坂茂氏 設計 1999年竣工
宮城さんの「絵画を自然の光で見られる美術館を」との要望で設計された全面ガラス張りの美術館。
この美術館は、ねむの木の里の一番奥にあるのですが、宮城さんのお話によると、設計者の坂茂さんがこの場所を決められたそうです。山中のうねった細道を辿り、緑に囲まれつつ平地のあるこの地に、子どもたちの聖地を求めたのかもしれません。
  

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【子ども美術館(緑の中)2】
三角形平面の三面の壁はすべてガラス張り、屋根には透光性膜材が張られ、内部は自然光だけで展示物を鑑賞できます。小屋組みは紙のハニカム材を三角形ユニットとした格子構造となっています。


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【吉行淳之介文学館1】
中村昌生氏 設計 1999年竣工
数寄屋建築の名手、中村氏により和風の佇まいを持ち周囲に溶け込むような設計。


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【吉行淳之介文学館2】
展示室の平面型と天井照明ボックス、展示ケースの関係が秀逸です。
内部の展示方式は、宮城さんの要望により細かく決められていったそうです。



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学園の子たちが描いた絵画の絵葉書。ショップではその他書籍や工芸品などが販売されています。
宮城さんの 『 やさしくね やさしくね やさしいことはつよいのよ 』 の言葉が深く心に響きます。



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子ども美術館(どんぐり)2階展示室にて2014年12月24日に撮影させていただきました。


by team_baku | 2020-03-28 16:00 | 所感・雑感 | Trackback

建築現場監理の内容や、建築見学の感想、日々の思いなどを綴らせていただいています。


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