住宅建築に纏わる本
2021年 02月 03日
住宅建築本を再読
休日、我が家の本棚の整理をしつつ軽く立ち読み。歴史小説であったり推理小説などなど、そんな中、専門書ではない本棚の住宅建築に纏わる本を久しぶりに読み返してみました。

「家をつくる」ということ
著者は芥川賞作家の藤原智美氏。私たちはつい、家は「建てる」と言ってしまうのですが、本のタイトルどおり「つくる」とういことが良く分かる内容です。22年ほど前に出版され読んだ本ですが、改めて読み返しても古さは感じません。
序章では日本の家族はどこにいくのだろうか、に始まり、展示される家・樹の家・百年の家・家族の消えた家・人を呼ぶ家・光と影のある家・家族をつなぎとめる家・子育ての家、と続きます。最後に「家をつくる」ということは「家族をつくりなおす」こと、と結びます。
家をつくる時には土地探しに始まり、建坪や間取りや工事費に主眼が置かれますが、普遍的なものとして家のために人があるのではなく、人のために家があるということを再認識させられます。

我輩は施主である
著者は芥川賞作家の赤瀬川原平氏(芥川賞 受賞時は尾辻克彦)こちらも22年ほど前の本ですが、著者が人生初の施主となり、自邸を建てる顛末を面白おかしく伝えている内容です。
冒頭ですが、
「我輩は施主である。家はまだない。これから建てる」
「施主というのは家を建てる人のことなのだと、今回はじめて知った」
「しかし家を建てるのは大工さんじゃないのか、という説もある」
かの名著『吾輩は猫である』ではありませんが、こんな軽妙な筆致で始まり、大団円まで楽しく読み進めることが出来ます。
登場人物は施主であり、自称 国王の赤瀬川原平さん。設計者であり首相のF森教授(藤森照信さん)。こうなると建設大臣はもちろん大工の棟梁。そして上棟式の日に現れた、イラストレーターであり路上観察学会仲間のM伸坊(南伸坊さん)は自宅から電車に乗り、ニッカボッカに脚絆で紫色の腹巻きにピンクのねじり鉢巻きのいで立ち。そして同じく路上観察学会の愉快な面々。最後に控える冷静沈着な赤瀬川家の大蔵大臣ニナ夫人が、花を添えつつ引き締めます。
F森教授によってニラハウスと名付けられた赤瀬川邸。今では建築家として有名な藤森さんですが、長く建築史家をされていたため23年前に設計をしたニラハウスは3作目。ニラは韮のことで文字通り野菜であり野草でもあるニラですが、屋根の上に生やそうと計画された住宅でした。そんなことを聞かされた赤瀬川さんはあっけに取られたり、また長野まで路上観察会メンバーと木材を切り出しに行ったり製材したり、通常の住宅建築では体験出来ないいきさつを経て我が家に愛着を持っていくという実話です。
ちなみにこのニラハウスはその年の日本芸術大賞を受賞することとなります。
by team_baku
| 2021-02-03 19:03
| 所感・雑感
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