建築物の遮熱について

年々高くなる気温とその対策

 今年も暑い夏になりましたが、お盆休みに入り雨続きで暑さも一休みという感じです。ただ前線が長期間停滞し全国的に大雨による影響が心配されます。大きな被害が出ないことを願うばかりです。来週後半には、また暑さがぶり返してくると思います。それに昨年の8月17日、浜松市(アメダス設置場所の中区高丘東)で41.1℃と日本観測史上歴代1位の気温を記録したことは記憶に新しいところです。
 
 このように年々暑く感じるようになった気温ですが、気になる気象庁の過去の気温データを調べ抜粋してみました。

  年  8月平均気温 年平均気温
 1883   25.8    14.8
 1920   25.3    15.4
 1940   24.8    15.2
 1960   26.7    16.0
 1980   24.8    15.5
 2000   27.6    16.7
 2020   29.7    17.5

 2020年と比較してみますと、1883年の8月平均気温では3.9℃、年平均気温では2.7℃、上昇していることが記録の上からも分かります。上昇率も1980年以降から一気に上昇しているのが顕著です。

 一般的に産業革命以降の地球温暖化により気温は1℃程度上昇したと言われています。上記比較は単年での単純な比較なので、そのまま受容される数値ではないと思いますが、戦後の浜松市都市化による緑地減少やその他間接的な原因も含め、浜松市は平均以上の気温上昇地域であり、この傾向が今後も続くのは避けられないことと予想されています。

 そこで住宅をはじめとした建築物では断熱だけでなく、遮熱をどうしたらいいのかということが従来から考えられてきました。

 熱は伝導・対流・放射(輻射)、この3原則で移動します。伝導は物質を介して伝わり、対流は液体や気体の流れによって運ばれ、放射は放射線(電磁波)によって運ばれます。

 遮熱は放射を対象とした対策です。ちなみに断熱は伝導を対象とした対策です。現在、遮熱材として遮熱塗料や遮熱シートなどがあります。

 遮熱材を用いたい箇所といえば、太陽からの日射熱の影響を受ける屋根と外壁(東・南・西面)ですが、遮熱材に関しては使用方法によっては、遮熱に関してそれほど期待出来ない場合があると実験報告されています。

 それは遮熱材の遮熱面の先が開放されていれば、日射熱は反射され戻って来ないので問題ないのですが、遮熱材が屋根材や外壁材の内側に張られていると、先に不透明な屋根材や外壁材に日射熱が当たるため、遮熱材に届く時には熱エネルギーに変換されていて、日射熱を反射させるというその性質を充分に生かせないことになってしまうということです。

 そのようなことから遮熱材を用いる場合は、直接日射を受ける表面に用いるのが一番効果的だと思われます。

 具体的には外壁材や屋根材表面への遮熱塗料塗りです。じつは出身事務所在籍当時のことですが、事務所建物の屋根材は折版(鋼板を山型に折り曲げた建材)で、しかも石膏ボード張りの天井裏には断熱材がなく、夏になるとエアコンが効かないくらいの暑さを感じていましたが、当時開発されたばかりの遮熱塗料を塗ったことにより室温が1~2℃ほど下がり、所員一同感激したという思い浮かびます。

 ただ、遮熱塗料は高反射率塗料でもあるので、使用箇所は反射光が周囲に広がらないパラペットの立ち上がった屋根面などが最適で、露出した屋根面や外壁面に施工する場合は、近隣への反射による光害を考慮し施工可能かどうか決める必要があると思います。


【気象庁HP公開 浜松市 観測開始からの毎月の平均気温】
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by team_baku | 2021-08-14 19:16 | 所感・雑感 | Trackback

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