前回までは、磐田市の津波対策として海岸防潮堤工事の現状を追っていましたが、今回は津波対策としてすでに完成している仿僧川(ぼうそうがわ)水門について調べてみました。
仿僧川は静岡県西部を流れる太田川の支流で、磐田市宮之一色地先(JR豊田町駅北側)を起点として天竜川の東側を南に流れ、祝川、旧仿僧川などが合流し東に流れを変え、さらに今之浦川が合流し、磐田市福田の南部を東に流れ、太田川の河口に流入する延長12.6kmの二級河川です。最近ではあまり行かなくなってしまいましたが、この仿僧川に架かる橋(通称・西橋)を渡り、中学校に通学していましたので、思い出深い橋であり川となっています。
この仿僧川が太田川に合流する手前の川幅152mの地点に、平成9年(1997年)、仿僧川水門と仿僧大橋が竣工しました。仿僧川水門は6連の扉体(ひたい)があり、地震発生時には自動的に扉体が降り、津波が仿僧川を遡上するのを防ぎます。また7基の水門操作室の屋上は避難場所になっていて、避難時には仿僧大橋の歩道側から欄干を開け、さらに非常解錠付きのドアを開け、螺旋階段を登り、屋上に避難することが出来る構造となっています。
そして今回訪れた仿僧川水門の東側、太田川河口の右岸には、ハマボウの群落のある「はまぼう公園」があります。ハマボウは亜熱帯植物で、7月中旬~8月中旬に開花し花弁は黄色く、朝開いて夕方には咲き終わる一日花ですが、株全体では次々と花が咲くのでひと月余り花を楽しむことができます。
河口で群落を形成するハマボウですが、種子は果実から弾けて周辺に広がり、塩分に強く水に浮く性質があるため海流に乗って広がり、漂着した海岸や河口などで新たに生育します。かつては千葉県から九州にかけ河口沿いに広く分布していましたが、近年の海岸造成や河川改修により生育環境の適地が減りハマボウの減少が続いてます。2019年時点では大阪府で絶滅、16県で絶滅危惧種に指定されているとの資料がありました。現時点ではと、
日本レッドデータ検索システムを当たってみたところ、19県に増えていました。元々の分布域を考慮すると、静岡県は絶滅危惧種に指定されていない数少ない県のひとつだと考えられます。
この磐田市福田に自生するハマボウは、遠州灘に面し太田川や仿僧川の河口に約150本余りが分布し、はまぼう公園には約40本のハマボウの群落があります。この公園のハマボウは仿僧川水門が造られることになった際、地元住民が水門工事により伐採されるハマボウを保護しようという活動をし、それを聞いた磐田農業高校の生徒さんたちも加わり、ハマボウを公園用地に移植したとのことです。今では貴重な樹木となってしまったハマボウ、これからもこの生育環境が守られることを願うばかりです。

【太田川、仿僧川河口付近.1】 ※Google mapより ※画像上クリックまたはタップで拡大出来ます。
仿僧川水門とはまぼう公園の位置関係。
【仿僧川水門.1】太田川河口右岸から望む。左側が仿僧川水門、右側が太田川。
このところ炎天下で暑い日が続いていますが、川岸は涼しい川風が吹き心地良いほどでした。
【仿僧川水門.2】
仿僧川水門全景 総延長152m 門数6門。
【仿僧川水門.3】開閉構造 鋼製シェル構造スライドゲート(巻上時ローラー)
扉体寸法 20.50m×6.175m
扉体重量 164.1ton
開閉速度 電動時 0.3m/min
エンジン時 0.1m/min
急降下時 2.0m/min
【仿僧川水門.4】
水門操作室。螺旋階段の入り口ドア。
【仿僧川水門.5】 水門操作室屋上の津波避難場所への案内板。
【仿僧川水門.6】水門操作室。
【仿僧大橋.1】橋上より仿僧川上流を西に望む。
【仿僧大橋.2】ハマボウがデザインされたアルミダイキャスト製欄干。
【はまぼう公園.1】太田川右岸河川敷に造られたはまぼう公園。右岸堤防より公園を望む。
【はまぼう公園.2】太田川右岸堤防より河口を望む。中央の独立樹木もハマボウです。
【はまぼう公園.3】ハマボウの群落を望む。
【はまぼう公園.4】ハマボウの群落と野鳥観察舎。
【はまぼう公園.5】公園南端の太田川河口では、洪水被害を軽減するための河川浚渫工事が行われています。
左側の塔状に見えるのは水陸両用ブルドーザーの排気塔で、先端には無線アンテナが付いています。水深7mまで作業可能で、陸上からオペレーターが遠隔操作(ラジコン)し、土砂を岸まで寄せます。その土砂をバックホウが掬い上げ、ダンプに載せ搬出します。
【はまぼう公園.6】はまぼう公園南端突先から遠州灘を望む。この樹木もハマボウです。
【はまぼう公園.7】公園内のハマボウ群落説明板。
学名の「Hibiscus Hamabo」は シーボルトとツッカニーニにより命名されたとのこと。
属名のHibiscusはギリシャ語由来で「Hibis(エジプトの女神)」の名からきているとの説があり、大形のゼニアオイ属につけられた名で、種小名のhamaboはもちろん「ハマボウ」のことです。
【はまぼう公園.8】
ハマボウ群落。
【はまぼう公園.9】ハマボウは花径6~10cmくらいの5弁花で、花弁の色は黄色で、付け根のほうは暗い紅色をしています。
【はまぼう公園.10】ハマボウ群落内通路。
【はまぼう公園.11】ハマボウの5枚の花弁が螺旋状に並んでいるのが分かります。
【はまぼう公園.12】野鳥観察舎。
鉄骨造2階建。この日は立ち入り禁止で観察小屋に入ること出来ませんでした。太田川河口はシギやチドリの飛来地として知られています。
【はまぼう公園.13】
公衆トイレ。
弊社では代表を始め、私も公衆トイレの設計を数多くしているのですが、この公衆トイレは弊社メンバーであり、静岡市で構造設計事務所を構えるTさんが構造設計をしています。最近ではこの近くの袋井駅南大型商業施設・ノブレスパルク袋井の構造設計をしていますが、別件で電話をしたら、このはまぼう公園に打合せ帰りに立ち寄られていたとのことで、公衆トイレの現状について話が弾みました。