引き続き磐田市の津波対策について調べてみました。遠州灘に面した磐田市福田(ふくで)漁港周辺は令和8年までに、漁港の内陸側に防潮堤が築造される予定ですが、漁港内にはすでに津波避難タワーが竣工しています。
一見、展望台に見えますが、地震に伴う津波発生時には周辺にいる人たちが避難できる津波避難タワーとして機能します。普段は電気錠で施錠されている入口のスチールドアですが、震度5弱以上、緊急地震速報の発表、大津波警報・津波警報の発表のいずれかの基準で、自動解錠する仕組みになっています。
この津波避難タワーは土日祝日の昼間は開放され、展望台としても使われ、ボランティアの方により津波避難タワーや防災対策についての説明を受けることもできます。

【福田漁港周辺.1】 ※Google mapより ※画像上クリックまたはタップで拡大出来ます。
【津波避難タワー.1】
外観 南西面。
混構造(鉄骨造・鋼管コンクリート充填構造)2階建 塔屋付
高さ 2階(避難階)12m 塔屋15m
延床面積 317.03㎡
1階床面積 31.84㎡
2階床面積 255.37㎡
塔屋床面積 29.82㎡
収容人員 330人
鋼管コンクリート充填構造とは鉄骨柱の鋼管内にコンクリートを充填し、座屈強度を高める構造です。
中央は鉄筋コンクリート造りの階段室、2階は鉄骨造で外壁は押出成形セメント板。
【津波避難タワー.2】2階床下見上げ。2階床構造は鋼板デッキプレート上にコンクリート打ちとなっています。
【津波避難タワー.3】内部階段。壁、階段共に鉄筋コンクリート造。
階段寸法は蹴上145mm 踏面290~890mm 有効巾1,860mm
※係員の方の許可を得て採寸しています。
【津波避難タワー.4】階段上裏も段状の型をとっています。
【津波避難タワー.5】階段踊り場。
蹴上145mm 踏面870~2,670mm 有効巾1,860mm
43段目、2階までは78段を示しています。
螺旋状の階段を約4周して2階に至ります。
【津波避難タワー.6】2階フロア。内壁は押出成形セメント板表し。開口部周りは板張り。
【津波避難タワー.7】簡易トイレ・毛布・非常食・飲料水など330人分の備蓄品が置かれています。
【津波避難タワー.8】蓄電池も設置されています。
【津波避難タワー.9】津波避難タワーや防潮堤の概要説明板。
【津波避難タワー.10】2階部分の構造体。柱は径700mmの構造用鋼管。大梁は梁成800mmのH形鋼。
【津波避難タワー.11】2階外壁の内面。R状に曲げられたH形鋼と外壁材の押出成形セメント板のスライド工法取付金具。
【津波避難タワー.12】2階屋上の救助袋。
津波によりガレキ等で1階出入口ドアが塞がれた場合には、この救助袋で下に降りられるように設置されています。
高さ1.5mの手摺パイプは防錆性に優れる溶融亜鉛メッキ処理が施されています。
【津波避難タワー.13】2階屋上、電気設備の入る塔屋の外壁に取り付けられた防災用ソノコラムスピーカー。
1台当たり、出力音圧116dB以上、通達距離860m(75dB)とのこと。
【渚の交流館.1】遠州地域の新鮮な魚や野菜を味わえる飲食店や物販店を持った施設も整備されています。
鉄骨造平屋建
延床面積 675.50㎡
客席数 110席

【福田漁港.1】
ちょうどこの時間(20日11時30分頃)シラス漁を終えた漁船が帰港中でした。
水揚げされた生シラスは漁港近くの加工場に運ばれ、釜揚げシラスやシラス干しに加工されますが、一部は生シラスとして流通します。
渚の交流館の飲食店でも味わうことが出来ます。

【福田漁港.2】
福田漁港東防波堤と浅羽海岸の沖にはシラス漁をする漁船、沿岸にはサーフィンをする人たちが見えます。
【浅羽海岸.1】今日は天気に恵まれ多くのサーファーが訪れていました。
【浅羽海岸.2】
海岸奥に見える山土は磐田市の隣市である袋井市が整備を進めている防潮堤。
【福田漁港北側.1】現在防災林のある場所に防潮堤が築造されます。
【福田漁港西側.1】
サンドバイパス工法吸込口 桟橋。
福田漁港は江戸時代には千石船も出入りした古くからの港ですが、航路が太田川や遠州灘からの砂で埋まってしまうことに悩まされてきました。西防波堤の外側に堆積した砂が航路に回り込むと水深が浅くなり航行が危険になり、また漁港東側の浅羽海岸では浸食が進んでいるため、同時にこの問題を解決しようと考え出されたのが、国内初の恒久的砂輸送システムです。ジェットポンプ式サンドバイパス工法と呼ばれ、この工法により西防波堤の外側に堆積した砂をジェットポンプで浚渫吸引し、パイプラインで約2.2km先の浅羽海岸まで輸送し、浸食された海岸線を復元することが図られています。 ※【福田漁港周辺.1】画像参照
ボランティア案内の方のお話では稼働しているのは、係員の務める時間帯の昼間のみで土日祝日は休業とのことで、吐出口から砂水が噴出している状況は見ることが出来ませんでした。
その後、福田漁港帰り、かつて国民宿舎ふくで荘のあった敷地に仮囲いがしてあるのに気付き、新たに何か建つのかと気になり駐車し、立て看板を見ていると、地元I建設の現場監督さんが現場事務所から出てこられたので、工事内容を聞くことが出来ました。それは太田川左岸で大規模な浚渫工事が行われていて、太田川河口左岸に堆積した土砂をジェットポンプで浚渫吸引し、パイプラインで約250m先の旧ふくで荘の敷地に堆積させ、水分だけ別のパイプラインで河口に返すことが行われる工事とのことでした。前回ブログの太田川右岸の浚渫工事に比べるとかなり大規模な工事のようでした。
そして、I建設建築部には、私の出身事務所の後輩Oさんが在籍しているので伺ったら、土木部の監督さんはもちろんご存じで、懐かしい話をすることも出来ました。帰りの車中、国道150号の太田川橋から河口方向に視線を送ると、川岸に黒煙を上げている水陸両用ブルドーザーの排気塔が見え、ご苦労様と思いつつ帰途につきました。