森町 友田家住宅 見学
2022年 11月 19日
遠州の小京都と呼ばれている静岡県周智郡森町ですが、この森町の市街地から吉川沿いに、北へ約12.5km(直線距離約9km)の山間部、亀久保地区に立地する国指定重要文化財の友田家住宅を、建築士Kさんと訪れてきました。10年ほど前にも友人K君と訪れていますので2度目の見学となりました。

【友田家住宅.1】

【友田家住宅.2】

【友田家住宅.2-1】

【友田家住宅.3】

【友田家住宅.4】

【友田家住宅.5】

【友田家住宅.6】

【友田家住宅.7】

【友田家住宅.8】

【友田家住宅.9】

【友田家住宅.10】

【友田家住宅.11】





現地では少し離れた駐車場から歩き、階段を上がり小さなくぐり門を通り抜けると、管理を兼ねられる友田家のおばあちゃんがいらして、出迎えていただき簡単な説明もしてくださいました。
友田家の祖先は伊勢平家に仕え、厳島神社の造営後に出雲の刀鍛冶となり、平家滅亡後、この地に土着したと言われているそうです。この住宅は、元禄期(18世紀初頃)に現在地に隣接する元屋敷(前畑)から移築したという言い伝えがあり、間取りは遠州地方の古農家にある形式で、基本的には「土間」「広間」「納戸」からなる前広間三間取りが発達したものと考えられ、「広間」が「台所」と1間喰い違っていることから「方喰い違い三間取り型」と呼ばれています。
規模は梁間5間(9.1m)、桁行8間半(15.47m)、棟高9mで、昭和58年(1983年)の半解体修理で建築当初の姿を再現し、平成7年(1995年)に屋根茅葺修理、平成23~24年(2011~2012年)に屋根茅葺き替え、耐震補強工事が行われたということです。
少し離れた場所から「友田家住宅」を望みますと、背後の山並みに馴染んだ茅葺の大屋根が目に飛び込み印象的です。この風景を見ると連想してしまうのが吉村順三氏設計の「伊豆多賀の家」です。設計事務所に就職して間もない頃入手した書籍、キサデコールセミナーシリーズ「設計技術を語る.1」内に、設計思考や設計図が掲載されています。その当時は同誌に掲載された安藤忠雄氏設計の「住吉の長屋」目当てで購入したのですが、同じく掲載されていた「伊豆多賀の家」の周囲の自然に調和した大屋根の建築が気に入り、記載された講演内容で吉村順三氏の設計思考を知り、今でも時々読み返す書籍になっています。

外観南東面。やはり茅葺の大屋根が印象的です。

「友田家のなりたちと重文民家」説明板。

拡大版。

南東面外壁と茅葺屋根の軒下。中央付近、広間の開口部には「オオカミ除け」という物騒な名称の頑丈な縦格子が設けられています。

間取り図。※友田家住宅リーフレットより

土間。広間や台所に上がる靴脱石ならぬ靴脱木。輪切りにされた切株が使われています。
広間の上がり框下には引違い戸の収納も設けられています。

土間奥。竈と流しがあり、外部側には適度な採光窓が設けられています。柱は6寸角(18cm角)から7寸角(21cm角)の断面寸法です。

大戸口。土間入口の引戸で障子戸を内蔵し、閉めた時にも採光が得られるようになっています。

土間上の梁組み。大断面の松材梁で組まれています。写真を見ると一部天井代わりのすのこ敷きのない部分があるので梯子状の階段が掛けられ、小屋裏が使われていたのではないかと思いますが、現地では暗くて気付かず、管理人のおばあちゃんにお聞きすることは出来ませんでした。

手前は広間。奥は槍の間と中の間。

広間上の梁組み。茅葺屋根の軒先近くの裏面を観ることが出来ます。

台所。部屋中央には囲炉裏。

【友田家住宅.12】
奥座敷。

【友田家住宅.13】
奥座敷の床の間。

【友田家住宅.14】
重要文化財指定書。初めて見ましたので撮影させていただきました。

【キサデコールセミナーシリーズ本】
「設計技術を語る.1」宮脇檀・渦が森の家、吉村順三・伊豆多賀の家、安藤忠雄・住吉の長屋、黒川紀章・福岡銀行本店、林雅子・海のギャラリー (掲載順)
昭和55年(1980年)新建築社発行本です。セミナーでのスピーチがそのまま記載され、設計図の一部も掲載されており、私にとっては大変貴重な書籍となっています。

【伊豆多賀の家】
セミナーによると、吉村順三氏はデザインはまず勘でいくということです。設計プロセスで試行錯誤はしますが、結局は勘の案に戻ってくるのがほとんどだと。この伊豆多賀の家は周りの山から大屋根のエレベーションとし、2階は突出することなく開口部上だけ緩勾配の屋根とし、部屋は小屋裏にうまく納め、なにか懐かしい落ち着いた外観になっています。そしてその原点は友田家住宅のような古民家にあるように思います。





by team_baku
| 2022-11-19 16:48
| 建築見学
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