昨日は静岡理工科大学で開催された令和4年度・公開シンポジウムと、昨年10月に竣工した土木工学科棟の見学会に参加してきました。弊社からは代表と私、出身事務所先輩のYさん、友人K君の4名での参加でした。
公開シンポジウムは昨年4月に新たに開設された土木工学科の主催で「現代に活きる伝統的土木技術を語る~過去から現代、そして未来へ~」というテーマで開催されました。
第一部は原忠 高知大学教授による「土木材を活用した新しい地盤改良技術と気候変動緩和策」というテーマの基調講演でした。新しい地盤改良技術とは何ぞやと聞き始めましたが、木の丸太による地盤改良のことで意外な思いでした。ただ偶然とはいえ、弊社で現在設計中の木造住宅も丸太による地盤改良を設計に取り込んでいるので、より興味深く聴講することが出来ました。
この工法は間伐材などの丸太の杭を地中に密(弊社で設計中の住宅・建築面積207.75㎡で93本)に打ち込み、緩い地盤を密実にし、液状化対策に効果を発揮させるというものです。この丸太による杭打ちは古くから行われている工法で、地下水位の条件が整えば100年近く経っても、丸太杭は地中で腐ることなく現存している事例が示されました。気になる法適合に関してですが、現在設計中の木造住宅の件で調べていましたが、建築基準法施行令第38条第6項において、条件を守れば基礎に木杭を使用することが認められています。
また、木杭に間伐材を大量に用いることにより林業の再生が出来、丸太を地中に打ち込むことは炭素を地中に長期間貯蔵することに通じ、それは地球温暖化の緩和に繋がり、地球の未来を救うという壮大な内容で、「地中に森を作る」という言葉が印象的でした。
第二部は「現代に活かされ続ける土木技術」をテーマに基調講演の原氏、日本蛇籠(じゃかご)協会の栗原氏、新日本設計株式会社の子上氏、袋井市教育委員会の白澤氏によるパネルディスカッションでした。
栗原氏からは、紀元前360~250年には考案されていた土木工事における石詰め構造物としての蛇篭は、素材と構造を進化させながら現代の土木工事でも使用されているという話。
子上氏からは、戦国武将が行った河川改修の事例の話。特に武田信玄の行った河川改修における信玄堤は知っていましたが、洪水の際には堤防の切れ目から遊水地に逆流させる霞堤は初耳で興味深いものでした。
白澤氏からは、地元・袋井市浅羽地区に江戸時代の延宝8年(1680年)の高潮水害を期に造られ、その後の高潮から地区の住民の命を守り、今なおその形を留ている築山である命山について聴くことが出来ました。これは昨年、
現代の命山と共に実際に見学に行っていたので理解しやすい内容でした。
そのシンポジウム後に開催された土木工学科棟の見学会ですが、構造は壁厚60cmを持つ3つのコアと、ワッフルスラブで構成された屋根の大空間を持つ設計で、外観のコンクリート打放しと相まっていかにも土木工学科棟らしい建築でした。
そして内部写真に関してですが、
建築学科棟を案内していただいた当時の野口学長は退職され、新棟公開の方針は変わったようで、残念ながら内部の撮影は禁止でしたので紹介出来ませんが、講義室やアクティブラーニング室は大空間を活かし、間仕切りは遮音層のある全面二重ガラス張りであったり、3~4階を繋ぐ吹抜空間であったり、外観とは対照的な開かれた空間でした。それにしても床仕上材はほぼタイルカーペット敷で、これが大学の校舎かと思わせるような豪華な内装で驚きました。